• シェイク!Vol.14 「今」(4)<br>竹中 功(株式会社モダン・ボーイズCOO)×野村 和生(フジテレビ)×谷口 マサト(LINE)

シェイク!Vol.14 「今」(4)
竹中 功(株式会社モダン・ボーイズCOO)×野村 和生(フジテレビ)×谷口 マサト(LINE)

異なる業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。コンテンツに関しての具体的な考察が熱い第四回は、FODが手がけるVRコンテンツの話題を皮切りに、実際の番組政策の具体的な話が飛び出す。制作費が唯一回収出来たコンテンツとは? BLは金の卵を産むコンテンツなのか? テレビは最大公約数を狙うメディア。逆にネットは最小公倍数を狙うメディア。その住み分けとは?

新しいものを試すのは常にやっています

野村

デジタル世代のディレクターなら制作費をもっと安くできるはずなんですよね。やろうと思えば一人でソフトを使ってテロップ入れて編集までできちゃうんで。予算や時間の都合によっては専門家に頼めばいいけど、お金がなければ一人で最後まで作れる。

谷口

スマホ向けの縦画面動画はどうですか? 制作費を大胆にカットできると思ったんですよ。エグザイルって画面を埋めるためにいっぱいいるじゃないですか。でも、縦画面なら3人ぐらいでいいですよ(笑)。セットも派手にしなくていい。スマホで見ると引きの絵が弱いので、アップの絵が基本になりますから。

野村

縦画面のドラマもいくつか作ってみたりはしました。でも縦画面だけのために作るとスマホで完結しちゃうじゃないですか。

谷口

まあ広がりがないですよね。

野村

ただ、新しいもの好きなディレクターを集めてちょっと試すっていうのは常にやっています。今だとVRの番組もね。

谷口

水着大会でしたっけ。

野村

『360°丸見え!VRアイドル水泳大会』です。

竹中

まずそういうことですよねー。

野村

地上波でやったんですよ、これ。いろんな壁がありましたけど(笑)。最新作はバーチャルデートができる『ドッチエ・LOVE? VR』。女の子二人のうちどちらを選ぶかでハッピーエンドかバッドエンドか変わってきます。

谷口

インタラクティブになってるんですね。

野村

3Dで撮るというのも新しい試みでした。OZOという目が8個あるカメラで撮るんで、みんな見えちゃうんですよ。どういう撮り方してるかっていうと、演者がいて、カメラがあって、カメラマンがいて、その後ろにディレクター、チーフAD、マネージャー、マネージャー、プロデューサーの自分と一直線になってずっとカメラマンにくっついてる。

谷口

すごい光景ですね。スポンサーについて聞きたいんですけど、FODで一社提供の番組を作る予定はありますか?

野村

全然やりますよ。

谷口

もうすでに?

野村

はい。そんなに多くはないですけど。

谷口

コンテンツマーケティングという分野で、一社提供でネット動画を作るときにどう作るのがいいのか考えていて。1本の短尺の動画がSNSでバズってもなかなかペイしないんですよね。全体的なリーチに結びつかない。なので、ネット動画の課題はシリーズだと思っています。シリーズを作って、世間的な態度変容をどかんと起こさないとブランドイメージに寄与しない。

野村

スポンサーは置いておいて、制作費の話でいうと、FODで制作費が回収できた番組は1つだけ。『VIRGINS~ハジメテに乱れる女たち』しかないです。ほんとのバージンを連れてきて、その子に少女マンガのようなシチュエーションを体験してもらう恋愛フェイクドキュメンタリーです。イケメン二人から突然奪い合われます。「俺とだ」「いや俺とだ」って。乙女ゲームとかが好きな女性向けに、一人称視点を目指して作ったもので、男が見てもまったく面白くない(笑)。

谷口

回収できたポイントはなんなんですか?

野村

ドキュメンタリー性でしょうか。出演OKな処女の女の子を探してくるって相当大変なんですよ。まだ3本しかできてないのは、3人しか出演OKな処女がいないから。あとは、ターゲットが振り切れてたところですかね。うちの編成で番組を気に入ってくれた女性がいて、地上波でも放送しました。案の定、男は無反応で女の子が食いついてましたね。「TVer」でもめちゃくちゃ再生されてました。

谷口

この間、まかり間違ってボーイズラブ作品を作れって言われたんです。勉強のために2ヶ月ボーイズラブ作品を読んで、幕末を舞台にしたストーリーを作りました。西郷隆盛の稚児がペリーに犯されて、「ペリーやめて」って言うシーンから始まるんですけど。それは色々あってダメになりました。あの2ヶ月はなんだったのか(笑)。

野村

でもBLって狙ってもなかなか当たらないらしいですよ。BLものも外部調達しようと話してるときに、当たったのは一つしかないって言われました。

谷口

書いてて面白かったですよ。ボーイズラブをやってると言ったら、女性友達から次々連絡が来て、こういう作品があるよってアドバイスをくれるんです。こんなに女性に話しかけられたのは初めてだって友達に言ったら、オタサーの姫の逆バージョンになってるって言われました(笑)。

野村

『ラブホの上野さん』ってね、女性をどうやってラブホに連れ込むかっていうハウツーものなのに、なぜか20代女性の視聴者が多いんです。家族と一緒には見られないから、動画配信でこっそり見てる。

谷口

『やれたかも委員会』って、マンガあるじゃないですか。女性といい雰囲気になるんだけど結局踏み込めなかった、でももしかしたらやれてたかもしれない……そんな思い出を男性が語るやつ。あれって女性も読んでるんですかね。(会場に)読んでる方いますか?(数人手が挙がる)。あ、読まれてますね。あれはきわめてネット受けがいいコンテンツだと思うんですね。テレビとネットの中間的な映像コンテンツだと何が受けるのかなってずっと模索してるんですけど、『ラブホの上野さん』もそのひとつかもしれない。

竹中

家族と見られないって言いますけど、家族でテレビを見るってほんまに今でもあるんですかね?

野村

テレビが大画面化したことで、子供部屋にテレビを置かなくなったんですよ。だから家族で見る番組が強いんですよね。FODがいちばん見られている時間帯は23時台です。おそらくGP帯が終わったあと、枕元でスマホ片手に視聴している。

谷口

家族じゃなくて個人向けに作るっていうのは、ネット動画のひとつのヒントかもしれないですね。家族向けだと、学校だったり親子だったり、だいたいテーマ決まってますから。

野村

地上波ってやっぱり最大公約数を狙いにいくんで。でも、ネットは、FODもそうですけど、ターゲットを絞っています。最初にお金を払ってくれる人ですからね。

谷口

ネットは最小公倍数を狙うから、スポンサーとのマッチング率が上がってくるんですよね。

野村

さっきのスポンサーの話で言うと、スポンサーの要望も聞きつつ作るのは、まあ、大変ですよね。それでもちゃんと調整のつくような、二人三脚でやっていけるようなスポンサーさんがいれば成立するのかなあと思いますね。

竹中

スポンサーってテレビに自社製品が映ってほしい、名前出してほしいって、まだ言うでしょ。でも、それだけじゃない。たとえば味の素スタジアムがあることで、味の素はスポーツを応援してるええ会社だと思ってもらえる。お金払う人ともらう人のコミュニケーションを変えなあかん。

谷口

NHKの朝ドラ『わろてんか』は吉本興業の物語ですよね。ある意味、スポンサードコンテンツにしてもいいぐらいの。

竹中

吉本興業にとったら「やったでー」ですよね。

谷口

「無料でやってくれんのかー」みたいな。

竹中

あれに合わせて『吉本興業百五年史』出したり、色々便乗してますけどね。

谷口

スポンサーとしてああいうモデルがいちばんの理想かなあ。

[ 次回 テレビがどこにも負けへんところはどこやねん へ続く ]

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