• シェイク!Vol.18 どうしたら作れる、面白い企画 4th(1)<br>伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)×米光一成(ライター)×佐藤ねじ(アートディレクター)

シェイク!Vol.18 どうしたら作れる、面白い企画 4th(1)
伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)×米光一成(ライター)×佐藤ねじ(アートディレクター)

異なる業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。18回目は、シェイク!4回目の登場。テレビ東京の伊藤Pこと、伊藤隆行さんとゲーム作家/ライターの米光一成さん。そしてアートディレクター/プランナーとして活躍する佐藤ねじさんの3名。
このとき世間を賑わしていた日大の話題が突然はじまったと思ったら、そこから企画の話になったり、みんなで「エイエイオー」をやったりと、最初から何が起こるか分からない展開。
最終的には企画の話が中心となった18回目のシェイク!その模様を全5回シリーズでお届けする。

日大アメフト部の事件から企画を考える

伊藤

オープニングトーク、立ちで行きましょうか(椅子から立ち上がる)。やっぱり立ちだとやる気が伝わるんですよね。

米光&佐藤

はい(笑)(立ち上がる)。

伊藤

ぼくらだいぶ仲良くなりましたね。

佐藤

そうですね。気楽になりました。

米光

(突然)日大学長の謝罪会見どうでしたか?(場内笑)

伊藤

あー、アメフト部の危険タックル問題の。どうなったの?

米光

ぼく、かぶりつきで見てたんですけど、まず最初に一般の女性が「ちょっと待った!」って乱入してきたの。「そんなまどろっこしいことやってらんないのよ」って前に出てきて取り押さえられるところからのスタート。もう、なに、番組? 三谷幸喜脚本? みたいな。そこからの展開はふつうでした。喋っている内容は昨日のコーチと監督の謝罪会見とほぼ同じです。

伊藤

今回の件について坂上忍さんと「あれをこどもはどう見てるんだろう」という話をしたんです。うちには小6と小1の子がいまして。「お父さん、安倍総理って嘘ついてるの?」とか聞いてくるわけです。こどもの目線に立ったときに一言浮かぶのは「大人ってバカだな」ですよね。そうだ、「大人ってバカだな」は企画になるなと。

佐藤

いきなり企画の話になった!

伊藤

以前、バーガーキングがいじめを防止するために作った動画「BURGER KING | Bullying Jr.」がYouTubeで公開されて、話題になりました。バーガーキング店内で、こどもがこどもをいじめている。同じ時間に、ぐちゃぐちゃにつぶしたハンバーガーを提供する。店内にいた大人の95%がつぶされたハンバーガーに抗議するため立ち上がった。しかし、いじめを止めるために立ち上がったのは12%だった。いわゆるドッキリ映像で、いじめを見て見ぬふりしている大人を映している。それを見て、みんな、自分ならどうするか考えますよね。そこから連想して、たとえば、大人に向かってこどもがどんどんクイズで問いかけをする番組はどうかな、とか。

佐藤

面白そう。

伊藤

出題者はこども。回答者には常識をふりかざす大人たち。筆頭に坂上忍。その横に長嶋一茂。5人の雛壇が前列後列あります。前列のいちばん右に出川哲朗なんですよ。で、後列のいちばん右に、古舘伊知郎さんに入ってもらいたい。

佐藤

もう絵ができてるんですね。

伊藤

こどもに威圧的に喋る人だとちょっと怖いじゃないですか。ちょっとバカなかんじの人とか、「おまえ、ふざけんなよー」とか言ってもあんまり怖くないタイプがいいですね。古館さんはちゃんとした大人の役所です。渡辺直美なんかもいいな。あと、元子役の内山くんとか。出題者は、芦田愛菜ちゃんと鈴木福くん。他にも一般の小・中学生。その間に立てるの、バカリズムしかいないなー。

佐藤

こういうかんじでふだんからやってるんですか? なにか事象を見たときに、伊藤さんなりに要素分解をして、アイデア出しをしている。

伊藤

そうです。で、こうやって話して、膨らませていっています。(客席に)見てみたいですか? あ、何人かうなずいたってことはアリなんですよ。

米光

発想の順番としては、最初に番組のコンセプトが浮かんで、次にキャスティングを考えるんですか?

伊藤

日大の事件があった日に一連のワイドショーを見ていて、これこどもどう思うんだろうって気になったのが最初です。それでタイトルは「こどもですがなにか」かなーと。

米光

コンセプト→タイトル→キャスティングの順なんですね。

伊藤

キャスティングは遊びみたいなものですけどね。ずっと立ってますので、このへんでタイトルコールを。ぼく、ひさびさに「えいえいおー」って言ってみたいんです。

米光

「えいえいおー」もう何年も言ってないなー。やりますか!

佐藤

わかりました!

伊藤

シェイク第18弾、みんなで盛り上げていきましょう。それではいきますよー! 「えいえいおー」。

全員

「えいえいおー」。

伊藤

この3人でのトークも4回目ですね。まずは自己紹介から。

米光

あ、ぼく、自己紹介のゲーム作ったんですよ! 前に遊んだ「はぁって言うゲーム」の新バージョンです。やってみよー。

米光

コンセプト→タイトル→キャスティングの順なんですね。

佐藤

いきなりゲームが始まった!

米光

前にここでやった「はぁって言うゲーム」はね、呆然の「はぁ」とか感心の「はぁ」、いかりの「はぁ」、いろんな気持ちの「はぁ」を、「はぁ」って言葉の言い方だけで当ててもらうっていうシンプルなゲームです。「はぁ」の他に、「好き」「ぷー」「んー」「笑み」などのバリエーションがあって、最新バージョンが自己紹介です。役割は「ヒーローで、セクシーに、悪役っぽく、天才っぽく、クールに、怪力野郎で、超美形で、ふつうに」の8種類。「名前+です」しか言っちゃいけないの。ぼくなら「米光一成です」って言う。その言い方で当ててもらいます。

伊藤

それ自己紹介になってんのかなー?(場内笑)

米光

あとで、あとで改めてちゃんとやるからー。

佐藤

でも、このかんじもふくめて自己紹介になってるんじゃないかなー。

伊藤

米光さんはこういう方です。

佐藤

いろんなゲームを作っています。「はぁって言うゲーム」は、JELLY JELLY CAFEバージョンも出ていますよね。「ベストアクト」というタイトルで。これすごいいま、ボドゲ界隈で話題になっているんですよ。

米光

ねじくんが言ってくれたから宣伝しよー。このゲームの商業流通版「ベストアクト」がいろんなゲームショップで売っています。2000円です。

(自己紹介のゲームを、お客さんも巻き込んでプレイ。お客さんの挨拶に「初対面なのにかんじわるー!」などとわいわい盛り上がる。そして正解発表。「米光さんほんとにクールな顔つきになってた。眠狂四郎みたい!」「伊藤さんのセクシー観があらわになったね」「そもそも、ねじって名前の悪役はいないよね」「天才だからやなかんじだったんだ」「圧倒的ヒーロー感!」などの声があがる)

米光

というわけで、米光一成です。よろしくお願いします。

伊藤

伊藤隆行です。テレビ東京で番組を作っています。

米光

「池の水ぜんぶ抜く」が大人気。月一回のレギュラー放送になりました。

伊藤

毎月になったおかげで、毎週抜いてます。

米光

大人気で各社がパロディやってる状態になって、とうとうAVのパロディまで出ましたね。「私の体に危険な外来種がいないか、体液を全部抜いて確かめて?」って言うらしいです。そのぐらいの人気番組になって。

伊藤

他にも、失敗を重ねながら、ゆるい企画をいろいろやっています。「モヤモヤさまぁ〜ず2」は12年になりますね。それから土曜夕方の、さまぁ~ずがスポーツにチャレンジするだけっていう「さまスポ」。あと、「にちようチャップリン」。内村光良さん出演のお笑い番組です。

米光

「にちようチャップリン」大好きです。 

佐藤

佐藤ねじと申します。ウェブなどのデジタルコンテンツを企画したり、デザインしたりしています。

米光

最近の作品は?

佐藤

最近だと「大人の悩みに6歳児が答えるラジオ」。いま、「Voicy」っていう、ネットで気軽にラジオ配信ができるウェブサービスが流行っているんです。ネットのインフルエンサーや有名人が話していて、こどもはまだいなかったので。6歳児を「先生」と呼んで、お悩み相談を募集して、それに答えてもらうと。失恋の悩みとか時事ネタとか、いろいろ来てますね。

米光

どう答えてるの?

佐藤

「勇気をもっていればできるはず!」「挑戦していけば弱みが強みに変わる」みたいな、まっすぐでキラキラの答えが返ってくるんですよ。でも10回ぐらいやって、だんだんマンネリ化してきた。毎回「自信と覚悟がだいじだ」って答えてる(笑)。

伊藤

そろそろ変化が必要かもしれない(笑)。

佐藤

ちょうどいまうちの子が小学校に入学したばかりなんですね。ラジオを始めたときは入学直前で、入学式を経て、いま二ヶ月くらい。その時期の生声がずっと残っていくって面白くて。こどもってすぐ育つから。

米光

相談の答えも、声質もどんどん変わっていきそう。

佐藤

息子のことをいろんな形で保存して、思い出にしたい。そういう個人的な動機とネットの作品性を組み合わせたものを作ったりしています。毎年、そのときの自分のこどもの年齢に合わせた作品を作っているんです。去年は、「5歳児が値段を決める美術館」でした。(注:くわしくは、シェイク13の第一回をお読みください。)。デジタル技術とデジタルじゃないものを組み合わせて作品にするのをライフワークにしています。

[ 次回 自分にしか作れないものの見つけ方 へ続く ]

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