• シェイク!Vol.18 どうしたら作れる、面白い企画 4th(3)<br>伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)×米光一成(ライター)×佐藤ねじ(アートディレクター)

シェイク!Vol.18 どうしたら作れる、面白い企画 4th(3)
伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)×米光一成(ライター)×佐藤ねじ(アートディレクター)

連載3回目は、伊藤さんのメモ書きから企画の思考法について話が膨らんでいく。突飛なアイデアから名前だけで想像出来るものまで。さらにはねじさんの企画の思考法や、「にちようチャップリン」の放送秘話まで飛び出します。

アイデアのふくらませ方

伊藤

気になったことをね、キーワードにして、いつもメモしてるんです。その手帳をもってきました。頭のおかしいひとみたいに、メモでぐっちゃぐちゃです。「キャンプしたけどあんた誰」。

米光

あーいいっすねー。キャンプしたけどあんた誰っていう状況はありそうですもんね。

佐藤

「世界イヤフォンバカ選手権」って書いてある。

伊藤

車運転してる身からするとね、イヤフォンして歩いてる人って、車に気付かないしよけてくれないから嫌なんですよ。で、クラクション鳴らすと睨まれる。でも、使う人はどんどん増えてますよね。スマホと共に一億総イヤフォン状態。で、昨日ね、イヤフォンしてるおばちゃんを三ノ宮の駅で見たんです。綺麗な格好をしたおばあちゃんがでっかい声出してんの。「人間の話なんだよー、人間のー!」って。

米光

何の話をしてんだろう。

伊藤

怖いと思ったんですけど、もしかしたら息子に説教してるのかもしれないと思い直しました。

米光

電話の、ハンズフリーでね。

伊藤

みんなが使う時代だなあと実感しました。このイヤフォン現象が番組にならないかな、と。ただイヤフォンだと番組にならないから、音楽番組はどうかなあとか。なにを聞いているかを調査して、ランキングを作る。第2位、落語ってね。若い人はけっこうラジオを聞いているみたいだし。

米光

地域性も出そう。赤羽の1位は? とか、知りたい。

伊藤

そういうのをテレビが聞きまくるのもいいかなー。

佐藤

ぼくもイヤフォンって気になってたんです。やっぱり、断片的に情報を聞くのって面白いじゃないですか。ぼくの場合は、通勤電車のなかで役者さんが電話で誰かと会話する形でドラマにできないかなって考えたんですね。日々、同じ電車の同じ時間帯の会話で、少しずつ物語を進行させる。たとえば、はじめは喧嘩してたけど仲直りするとか。それは伊藤さんとはまた違ったアウトプットですけど。

米光

スタートが同じでも、アウトプットってそれぞれ違うね。

伊藤

45歳になったんで懐かしいのもやりたい。「やっぱりお返しします。借りパク返し」。

佐藤

ほっこりしそうですね。

伊藤

あと、「先生、生きてますか?」。うちの小学校が、学級崩壊やたら起こしてるんですよ。こどもが先生をいじめちゃって。

米光

先生がいじめられちゃうの?

伊藤

可愛らしい顔した若い女の先生がかっこうの餌食なんですって。で、いじめる側もたいてい女の子。いま、先生、大変でかわいそうじゃないですか。昔と違って体罰はふるえないし、言うことは聞いてもらえない。最近ドラマの主役に先生はあんまりならないし。がんばってほしいなー、先生、と思っているうちに、お世話になった先生、生きてるかなあと気になったんですね。小学校のときに「かっこつけなくていい、無理すんなよ」って言ってくれた先生がいて。他には「どかす」だけで番組作れないかなーとか。石をどかすと虫がぐわーって出てくるみたいに、なんか、でっかいものをどかせないかなと。

米光

おっきいもんどかしてほしいなー。大仏とか!

伊藤

「食べ残しを食べる」。

米光

え、どういうことですか?

伊藤

食べ残しを食べまくる。食べ残し大国ニッポンですから。

米光

芸人さんか誰かが、食べ残しを見つけて食べるってことですか?

伊藤

具体的なことはおいおい考えます。ただね、食べ残しは国連も掲げる大きな課題ですからね。

佐藤

大事ですよね。フードロスを減らすための、フードシェアリングサービス「TABETE」とかありますもんね。

米光

「一問一島」?

伊藤

島一周歩いて一問だけ問題を出す。語呂がよすぎて、タイトルはあんまり好きじゃないですね。「あのときのあれどこ行った?」は、気に入ってます。歴史ものです。年号が変わったとき、小渕恵三さんが「平成」って出したじゃないですか。あの紙どこ行ったんだろうと。

米光

ああー!

佐藤

気になります。

伊藤

知ってる人いますか?

米光

知らなーい。

伊藤

DAIGOが「よくわかんないけど家の蔵にあったっす」って、ちょいちょい持ち出して番組に出てるんですよ。

米光

へー!

伊藤

当時の総理大臣だった竹下登の家にあったってことですね。その後、家族会議で「うちで持っているのは違うんじゃないか」という話になり、記念館に寄付したそうです。

佐藤

面白いですねー。そういう番組なんですね。

伊藤

浅間山荘事件の、あの鉄球、どこいった? とか。

米光

へーーーー。どこに行ったんだろう? ないのかなあ。でもなくすのも大変ですもんね。

伊藤

だいたいなんで、どうやって作ったのか。 そういう謎を掘り下げる歴史ものです。

米光

あーそれ見たーい。

伊藤

こういうふうに、飲み会でも会社でも、アイデアを話すんです。光がレンズに入って屈折するように、相手の反応によってアイデアも影響を受けます。話すと「ないなー」「この言い方だと反応あるな」「若い子が意外と食いついてくれたな」とかわかるじゃないですか。これを何人か回すんです。で、一回まとめて寝かします。企画書書くのってめんどくさいから、先にやりたくないんです。言葉だけ用意して、遊ぶようにいろんな人に投げて、跳ね返ってきたのを受け取る。最近それが面白くてしょうがないですね。

佐藤

ぼくも、発見したことをSNSに書いて反応を見ることはあります。いいね数よりは、誰が反応したかを見ます。センスのいいこの青年が反応するなら行けるんじゃないかなって判断する。

米光

「にちようチャップリン」はどういう発想で生まれたんですか?

伊藤

内村さんに「ネタ番組やろう」って言われたからです。

佐藤

シンプルな理由なんだ。

伊藤

「そうだ旅(どっか)に行こう。」という旅番組が終了したときの飲み会のときでした。内村さんは本来、オーラを消していて、人にあまり話しかけない人なんです。飲み会では静かにニコニコしてて、そのまわりに人が集まってくる。でもそのときだけ、内村さんが「あのー」って。

米光

話しかけない男が話しかけてきたと。

伊藤

「テレ東さんは、若手のネタ番組はやらないんですか?」って言ってきた。話しかけられたの、それが初めてだったんですよ。「いや、やらないってことはないです……。やります。やらせていただきます」と。

米光

即決定だ。

佐藤

その一言で。

伊藤

編成のところに行って「内村さん、ふだん話さないのに話しかけられて」って、いましたみたいな話をして。それで、内村さんがほんとに尊敬している喜劇人がチャップリンなんですね。名前をとって「そこそこチャップリン」としてスタートしました。

米光

「そこそこチャップリーン♪」って歌ってた黒人がいなくなっちゃってさみしいんですよ。

伊藤

歌う人ねー、アメリカ帰っちゃいました。

米光

いま、「1年ぶっ通し!お笑い王決定戦2018」っていう、1年かけたバトルをやってるんですよね。

伊藤

そう言ってるだけですね。そんな長いの、誰も待たないっすよね(笑)。

米光

いやいや毎週楽しみに見てます。

伊藤

実力派がたくさん出てきてるから、早く他局さん使ってくれないかなーって。そうすると売れるんですよ。若いころ、日テレの「エンタの神様」のプロデューサーをしている五味さんが、ぼくがやっていた「やりすぎコージー」のことを「見てるよ、あれはいいネタ見せ番組だね」って言ってくれたんですね。前番組は「やりにげコージー」という深夜放送で、まだ売れてないころのハリセンボンや宮川大輔が出ていた。あのころ宮川さんはまだ大阪にいて、ほっしゃんという相方がいて、チュッパチャプスというコンビ名でした。彼を擬音の使い方が面白い「擬音師匠」という扱いで出したりしましたね。大阪にはまだ知られてない面白いやつがたくさんいるぞってことを伝える番組でした。そこからいろんな人が出てきた。

米光

「にちようチャップリン」も出てきそうっていうか、もう出てきてますよね。

伊藤

ジェラードン、ネルソンズの和田まんじゅうさん、ふつうだったらもう行ってる。でもいま、どっちかっていうとテレビがふつうじゃないのかもしれませんね。あれが売れない。まあでもいま、トリオのコントが面白いっていうかんじにはなってきたかもしれないです。四千頭身とかね。

米光

トリオ多いですよね。あと、ピンの人も面白い。マツモトクラブさんとか。脳みそ夫さんも、いま女子高生に大人気。

伊藤

脳みそ夫? 「こんちわ〜す」って言うやつ。女子高生に受けてるみたいですね。

米光

癖になるかんじで好きなんです。

[ 次回 惹きつけるタイトルのつけ方 へ続く ]

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