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Gプレスインタビュー

2011.October | vol.100

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テレビの役割って、何だろう。

スカパーJSAT株式会社
執行役員専務 有料多チャンネル事業部門放送事業本部長

田中 晃 さん

たなか・あきら
1979年日本テレビ放送網株式会社入社。「箱根駅伝」「劇空間プロ野球」などを多くのスポーツ中継を手掛ける。コンテンツ事業局コンテンツ事業推進部長、編成局編成部長、メディア戦略局次長を歴任し、2005年6月株式会社スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT株式会社)執行役員常務就任。2010年7月より現職、放送事業全般を統括。株式会社スカパー・エンターテイメント代表取締役社長を兼任。

視聴率が低下し、「テレビ離れ」が業界にとって深刻な問題となっている。その一方で、チャンネルは増えている。テレビが全盛だった四半世紀前、テレビのチャンネルは地上波の数チャンネルしかなかったが、衛星放送やケーブルテレビの普及、放送のデジタル化に伴いチャンネル数は爆発的に増え、また視聴端末もここ数年で一気に多様化した。チャンネルが増えることで視聴番組の選択肢が増えていくなか、テレビの存在意義とは何かがあらためて問われる時代になったともいえる。テレビとは何か-という少しスケールの大きなお話を、スカパーJSAT株式会社執行役員専務 有料多チャンネル事業部門放送事業本部長の田中晃さんにうかがってみました。

―テレビ離れの一因は、地上波の番組がつまらなくなったことにある。つまらなくなったのは視聴率に捉われすぎているから、という指摘を時々ききますが、この指摘に対して田中さんはどう思われますか。

一概に視聴率のせいにするのは、ちょっと短絡的ですね。それに、面白い番組は今でもたくさんあります。ただ、全体的に言えるのは、昔に比べてマーケティングの論理がかなり先行するようになったことは確かです。昔の番組は、良くも悪くも<やんちゃ>でしたよね。たとえば、「11PM」という深夜番組が昔ありましたが、タイムスポンサーがついていたらとても出来そうもない企画ばかりやっていました。あの番組のCMは、オールスポットだったんです。そしたら、そのスポット枠がすごく人気になっちゃいまして。あんなことは、今はなかなかできない時代になりました。あの頃(当時私は日テレにいたのですが)、私たちが心がけていたのは「視聴者の半歩先を行け」ということでした。しかし、それも今は難しくなりました。飛び交う情報の量も質もスピードも昔とはまったく異なりますから、半歩先行くどころか、半歩後から追っかけていく感じになっています。

―地上波ができなくなったことを、スカパー!のような有料衛星波チャンネルでやっていく、という意識はあるのでしょうか。

当然、そういう気概をもってやっています。私たちは、視聴率という指標に捉われなくてよいわけですから。たとえば、つい先日から始まった『バズーカ』というスカパー!オリジナル番組では、制作に2つの指令を出しました。一つは、視聴者の半歩先を行く番組を作れ。もう一つは、地上波ではできない番組を作れ、と。マーケティングデータによるのではなく、作り手の意志によって番組を作れということです。ただ、そういう一つの面白い番組を作るということも無論大事ですが、私たちにはもっと大きな役割があると思っています。

―大きな役割、とは何でしょう?

典型的な例が、「Jリーグ全試合放送」といったコンテンツ。これは、視聴率という論理のうえでは決して成り立たない、有料多チャンネル放送だからできるコンテンツです。私たちの目標は、Jリーグがそうであるようにスカパー!も「地域に密着し、その地域の人たちに愛される存在になる」こと。私たちが放映するJリーグの試合の中には、確かに視聴者のかなり少ない試合もあります。それでも、そのチームの試合を見たいと思う地域の人たちがいて、その人たちにチアされるクラブがあって選手がいて、その選手のプレーに憧れサッカー選手を夢見る地元の子供たちがいる限り、私たちはその試合を放映する使命があると思っています。なぜなら、私たちテレビには、「コンテンツ・芸・文化を育てる」使命があるからです。たとえば、サッカーというコンテンツをテレビで放送することは将来の日本サッカーの発展につながります。「コンテンツ・芸・文化」が育つことで、私たち放送業界も発展して、利益を享受できます。テレビ放送と世の中とは、本来、そういう育て育てられる関係にあるべきだと思います。

―コンテンツを育てることが、テレビの使命である。-これは、地上波であれ衛星波であれ、無料放送であれ有料放送であれ、普遍的な使命ですよね。

おっしゃるとおり。たとえば、野球がそうでした。テレビの繁栄と日本のプロ野球の発展は切り離せない関係にあります。芸人もしかりです。昔の番組は、芸人を育てる役割をもっていました。作る側もそういう意識でやっていましたし、そういう意識は視聴者にも伝わり、視聴者もその芸人を一緒に育てていくというドキドキ感をどこかに持ってテレビを見ていたのではないでしょうか。それに対して、今の番組は、スポーツもタレントも「育って出来上がったものを持ってきて作る」という傾向が強いですよね。それではただ「消費する」だけになってしまいます。

―それは、時代とともに、「視聴率」といった数字の呪縛がどんどん大きくなっていったということでしょうか。

地上波でいえば、視聴率。私たちでいえば、加入者数。そういう<数字>は、ビジネスである以上どうしたって付いてくるものであり、番組を作る上で必要な指標でもあります。ただ、私は常々スタッフに言っている事があります。たとえば、「Jリーグ全試合放映」。このコンテンツのゴールはどこにあるか、と。「加入者が増えること」でしょうか? 違います。目標ではありますがゴールではありません。先ほど申し上げたように、「サッカー人口が増え、サッカー選手を目指す子供たちが増え、そこからスター選手が生まれ、日本のサッカーが強くなり、日本がいつかワールドカップでベスト4になること」が、このコンテンツのゴールです。テレビ放送にとってのゴールは、数字ではない。その先にある。私は、そう思っています。

―本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。

気になるテレビ語 groovy word on TV

『ラグビー』


スポーツの秋。野球は日本シリーズ、サッカーはW杯アジア予選など、スポーツの秋にふさわしい幾多の熱戦が各スポーツで繰り広げられています。その中でも、検索数が843(8月)→8,441(9月)とジャンプアップしているのが『ラグビー』です。その要因には、ニュージーランドで開催されている『ラグビーW杯2011』に日本代表が出場していることが挙げられます。今大会で七回目の開催を迎える『ラグビーW杯2011』は、五輪やサッカーW杯と同じく四年に一度開催され、日本代表は1987年の第一回大会から連続出場しています。最近では『なでしこジャパン』など、他のスポーツでも『ジャパン』という呼び名が使われていますが、元々はラグビー日本代表の呼び名として用いられ、その時の監督の名前とかけて『宿澤ジャパン』や『平尾ジャパン』と呼んでいます。今大会の『カーワンジャパン』は1991年の第二回大会以来の勝利に加え、「最低でも2勝」という目標に挑みましたが、結果は1分3敗に終わり、一次リーグの突破と20年振りのW杯での勝利とはなりませんでした。2019年には日本でのW杯開催も決定しています。W杯で勝利し、世界にジャパンのラグビーを披露することができれば、検索数も今回よりアップし、ひいては、ラグビー人気のアップ繋がることを、元ラガーマンの筆者として祈っております。


『Gガイドモバイル』ユーザ検索ログデータより 集計期間:2011/9/1-9/30

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