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Gプレスインタビュー

2012.May | vol.107

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WOWOWの存在意義とは何か。

株式会社WOWOW
常務取締役

橋本 元 さん

はしもと・はじめ
株式会社WOWOW
常務取締役
1990年4月日本衛星放送株式会社(現・株式会社WOWOW)入社。2003年編成局編成部長、2004年編成局長を経て、2005年6月取締役編成制作局長、2006年6月取締役メディア戦略局長。2007年6月取締役経営戦略担当。2011年 6月から現職。

公共放送であるNHKと無料で視聴できる民間放送によってテレビ文化が築かれてきた日本では、有料放送の歴史は浅い。その端緒となったのは、1991年日本民間放送初の有料衛星放送として開局したWOWOWである。当時、有料放送文化が浸透していなかった日本において前衛的な存在として開局したWOWOWは、いわば「実験的な放送事業」と位置づけられ注目を浴びた。あれから21年が経ち、有料放送文化が定着、多チャンネル化による競争の時代に入った現在において、WOWOWはどんな道を歩もうとしているのか。開局当時からこの「実験的な放送事業」に携わってこられた常務取締役 橋本元さんに、お話をうかがってみました。

―様々な有料放送サービスが存在する現代において、WOWOWらしさ、WOWOWならではの価値とはどこにあるとお考えですか。

WOWOWはご存知のように、開局当時から「大実験場」であることを生業としてきたわけですが、それは今も変わりません。どの放送局もまだやっていないエンターテインメントを届けること。公共放送でもない、スポンサー収入によって成立している広告放送でもない私たちの強みは、純粋に私たちが「これを届けたい」「これを見てほしい」というコンテンツをオンエアすることができます。それが、WOWOWらしさであると、開局当時からずっと思ってきました。しかし、昨年の震災直後は、一度立ち止まって考え直しましたね。我々が提供する「エンターテインメント」の存在価値は何なのだろうか、と。それで、お客様の声を拾ったところ、皆さんこうおっしゃるんです。「普通でいたい。だから、楽しいテレビが見たい」と。私たちは気付かされました。エンターテインメントは、実は、人々が生きていくためのライフラインの一つだったのだ、と。「メディアとしてきちんとしたエンターテインメントを届けよう」という思いを新たにさせられました。

―「メディアとしてきちんとしたエンターテインメント」とは具体的にどういうことですか。

私は、「お客様が見たいコンテンツをオンエアする」というのでは「メディア」とは言えないと思っています。お客様が「へぇー!世の中にはこんな面白いコンテンツがあったんだ!」とか、「そうそう!こういうのが見たかったんだ!」「自分はこういうのが本当は好きだったんだ!」と思えるコンテンツを届けてこそ、「メディア」であると思います。「WOWOWって、要するに、空飛ぶレンタルビデオでしょ」と、開局当初よく言われましたが、もしお客様が見たいコンテンツをオンエアするだけの放送局だとしたら、確かにそれはレンタルビデオ店と差別化ができず、きっと21年間も存続はしていなかったでしょう。

―言い換えれば、WOWOWは、コンテンツのコンシェルジュ、あるいはレコンメンデーターであるということでしょうか。

それよりももっと「うっとうしい」存在でしょうね(笑)。

―「うっとうしい存在」とはどういうことですか。

たとえば、私がある音楽を好んで聴いていたとします。それを知った友人が『おまえ、こんな曲好きなんだ。だったらあれ聴いてみろよ。絶対気に入ると思うから』とある曲を薦めてくる。また別の日にその友人に会うと『あれ聴いてみた? どうだった? よかっただろ』と言ってくる。『いや、まだ聴いてないんだ…』と言うと、『なんだよ…。わかった、じゃあ俺のCD貸してやるよ』となる。そういう、非常に「うっとうしい」友人っていますよね?(笑)。でも面白いことに、そのうっとうしい友人がいるおかげで、趣味の世界が拡がり、人生が豊かになっていくわけです。音楽、映画、スポーツ…エンターテインメントをより深くより広く楽しめるようにしてくれるのは、その「うっとうしい」友人の存在が欠かせません。WOWOWはそういう存在であるべきであると考えています。

―確かに、ある音楽を最初に好きなるのはちょっとしたきっかけや個人的衝動によるものであっても、それをさらにリッチでディープな嗜好に拡げていくときには、同じ趣味をさらに深く広く知っている「うっとうしい」他者の存在が欠かせませんよね。

そうです。私はそれを「雑音」とか「異物」と言ったりもしています。メディアである以上、この雑音や異物は必須であると思います。雑音や異物が、人の心をリッチにしていくのであり、そもそも「楽しい」とは、「心がリッチになっていくこと」です。だから、聞きなれた、見なれた、想定内のコンテンツばかりを流す放送局では、メディアとはいえません。人の心をリッチにしないわけですから。ましてや、私たちは有料放送、お客様からお金をいただいているのですから、お金を払っただけのことはある!と思ってもらうためには、「まさか、そんなの放送するの?」といったようなお客様へのサプライズがなければならないと思っています。

―本日はお忙しいなか、貴重なお話をありがとうございました。

気になるテレビ語 groovy word on TV

『日曜洋画劇場』


テレビ朝日系列にて45年間も続いているスーパー長寿番組。4月の番組別検索ログでは、同番組「45周年特別企画 相棒-劇場版-絶体絶命!42.195km」が2位にランクされており、人気ぶりは今なお健在である。当番組が開始された1967年当時、洋画は映画館でしか見られなかった時代。その映画がお茶の間で無料で見られるのだから、視聴者を釘づけにしたのも当然だろう。しかし、その後レンタルビデオショップが登場、BS放送の開始等を経て、今やオンデマンド視聴も自在な時代。にも関わらず同番組の人気が衰えないのは、映画というエンタテーメントがもつ固有の魅力に因るところが大きいのではないか。いみじくも、WOWOW橋本常務がおっしゃっている。映画、音楽といったエンタテーメント体験を深めていくには「うっとうしい」ナビゲーターの存在が欠かせない、と。若い方はご存知ないかもしれないが、かつて同番組には、淀川長治という「とてつもなくうっとうしい」名映画解説者がいた。


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