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Gプレスインタビュー

2014.March | vol.126

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テレビ演出家は、
スペシャリストか、ジェネラリストか。

読売テレビ放送株式会社
  東京制作局
プロデューサー・ディレクター

勝田 恒次さん

かつた・こうじ
1968(昭43)年12月23日生まれ。93年読売テレビ入社。以来一貫して制作業務に携わる。現在、読売テレビ東京制作局勤務。「ダウンタウンDX」ディレクター兼プロデューサー、「浜ちゃんが!」「にけつッ!!」「ガリゲル」ほかプロデューサー。

 『テレビ番組の制作現場の第一線で活躍する、今注目株の若手テレビマンたちのリアルな話をお届けするGプレス。昨年の、『世界の果てまでイってQ!』等を手がける古立善之さん(日テレ)、『リアル脱出ゲーム』等を手がける中島啓介さん(TBS)に続き、今回は、長寿番組『ダウンタウンDX』等を手がける読売テレビ勝田恒次さん。いわゆる「準キー局」と呼ばれる放送局で、全国ネットから関西ローカルまで多種多様な番組を手がける勝田プロデューサーに、キー局にはない番組づくりのメソッドやカルチャーについてお話をうかがってみました。

-『ダウンタウンDX』といった全国ネット番組を、キー局が制作するのと、準キー局が制作するのとでは、姿勢とか考え方において何か違いはあるのでしょうか。

 面白いものを作る、視聴者をあっと言わせる、スポンサーの期待を裏切らない・・・番組をつくる姿勢そのものがキー局と準キー局とで違うということはありません。ただ、制作する側にとって、その番組のポジショニングというのは違うと思います。キー局ですと、全国ネット番組であることが当たり前ですが、我々にとっては、やはりそれは「特別な番組」という位置づけになります。とりわけ、『ダウンタウンDX』は、プライムタイムで、しかも20年以上続いている長寿番組ですから、そもそもキー局制作の番組と比べても稀有な存在です。視聴者の期待も、スポンサーへの責任も大きいですから、読売テレビの中では、他の番組にはないプレッシャーはあります。

-勝田さん自身の中でも、『ダウンタウンDX』は特別な存在なのでしょうか。

 普段は、特に『ダウンタウンDX』だから・・・といった特別視した感覚を持って仕事しているわけではありません。キー局と違うところは、一人でたくさんの番組に関わらないといけません。キー局ですと、1人のプロデューサーはせいぜい片手で数えられる本数の番組を担当する感じですが、私たちの場合、多いときは一人で十数本の番組に関わらないといけませんから、特定の番組だけに集中できる環境がキー局に比べて低いわけです。しかも、キー局の場合、複数抱えていたとしても「バラエティ担当はバラエティ」という役割分担が敷かれていると思いますが、我々の場合、バラエティやる一方で報道もやるといったことは日常茶飯事です。でも、だからといって、スペシャリティが磨かれないか、1番組あたりの味つけが薄くなってしまうか・・・というと、そういうことにはならないと思っています。むしろ、様々な番組を同時並行で作らなくてはならない中で、いろいろなエッセンスを同時に習得できますから、1人あたりが積み重ねるエッセンスのバリエーションは、キー局よりも多くなるのかもしれません。

-よく「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」という分け方をし、テレビ番組の作り手たるや、クリエイターゆえにスペシャリストでなくてはならないといった先入観を抱きがちです。ですが、先日、日テレの古立ディレクターもおっしゃっていましたが、両方のタイプがいていいんじゃないかと。

 私もそう思います。弊社にも、両方のタイプがいます。『ダウンタウンDX』を20年間ずっと一緒にやってきた私の直上の先輩は、典型的なスペシャリストタイプです。高い個人技をもっていて、彼にしか考えられないこと、彼にしかできないことというのがあります。一方、私は、全くそういうタイプではありません。でも、自分には、彼のような傑出したスペシャリストたちの才能を引き出し、それらを紡ぎあげて一つのカタチにする能力は、わりと誰にも負けないものを持っていると思っています。それは、ある意味、ジェネラリストをきわめてきた故に自分に培われたスペシャリティといえるかもしれません。

-それって、先ほどの準キー局の番組づくりの話に通じますね。1人がいろいろな番組に携わらなければならない。だから、ある意味ジェネラリストでないといけないわけですが、それをきわめていく中で、ある種のスペシャリストになっていく、という。

 スペシャリストとジェネラリストとは対極のものではないということです。スペシャリティをきわめた先にある高い次元でのジェネラリティもあれば、ジェネラリティをきわめた先にあるスペシャリティというものがある。人によって、どちらの入り口から入るかというだけの違いかもしれませんね。同じ山を登るのに、東ルートの登山道から登るのか、西ルートの登山道から登るのかというだけの違い。番組はチームで作るものですから、目指している山が同じであれば、そのルートは多様であればあるほどよいわけです。多様なエッセンスがそこに注ぎ込まれるわけですから。私は思うのですが、『ダウンタウンDX』がなぜ20年以上も続く長寿番組になりえたのは、高度なチームワークの賜物だと思っています。いろいろな個性をもってメンバーがいて、でも、みなゴールは同じところにあるので、あうんの呼吸で進んでいくんです。みなそれぞれの個性、スペシャリティを持っているのですが、誰かと誰かとが対立してしまうとか、いがみ合うとかいうことが、不思議とないんです。むしろ、暗黙裏にお互いがフォローし合って最高のものをつくっていく、それが、『ダウンタウンDX』のチームは、できているんです。

-それは、勝田さんの存在は大きいのではないでしょうか。生粋のスペシャリストの先輩がいて、その才能をフルに引き出すスーパージェネラリストとしてのスペシャリスト勝田さんがいる、という。

 それは、読売テレビのカルチャーといいますか、社風なのかもしれませんね。確かに、誰が決めたわけでもなく、いい感じのバランスがとれています。たとえば、先ほど申し上げました私の直上の先輩は、ある意味自分とは対極的な人間なわけです。彼が紅とすれば、私は白。でも、彼の直上は、また白なんです。どういうわけか、紅白紅白・・・の順になっていますね。もし、直上と直下が紅同志だったり白同志だったりしたら、やっぱりぶつかると思うんです。でも、おじいちゃんは孫にやさしく、子供も父親とは張り合うけどおじいちゃんとは張り合わないじゃないですか。だから、紅白紅白・・・の順番がきっとベスト人事なのではないでしょうか。誰が意図したわけでもないと思うんですが、うちの会社は、そんな感じの人材配置になっている気がします。

-私が、かねてより不思議だなぁと思っていたのは、読売テレビの人たちって、みんな仲いいじゃないですか。完全にいい意味で。それって特殊だと思います。テレビの制作って、個性のぶつかり合いですから、普通、どうしたっていがみ合いとかウマが合わないとかってあると思うんです。でも、御社社員には、あまりそういうのを感じないんですよね。

 自分は、大学を卒業してからずっと読売テレビでしか働いていませんので、これが普通なので、他のテレビ局がどうなのか知らないのですが、おっしゃる通りで、いがみ合いとかウマが合わないとかいうことを感じたことは、今まで一度もないですね。アホみたいな言い方ですけど、うちの会社「みんないい人」なんですよ(笑)。とはいえ、無論仲良しクラブとかいうことでもなく、主張することはしますし、叱るときは叱りますし。でも、結局、それは本質的なレベルで正しければ、お互いが認め合い、尊重しますし、逆に、「この企画はいいけど、あいつ気に入らんから・・・」とか「この企画いまいちだけど、あいつは俺のお気に入りだから・・・」とか、そういう個人的な好き嫌いとかで仕事が進んでいく風潮は、うちの会社にはありませんね。そう考えると、手前味噌ですが、いい会社だと思います。

-本日は、お忙しいなか興味深いお話をいただき、ありがとうございました。

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