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2009.February | vol.70

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世界のデジタルテレビ革命は、日本から始まる。

サイバー・メディア株式会社
エグゼクティブ・ディレクター

マルコ・クーダーさん

日本のメディア環境は、特殊であるとよく言われる。たとえば、テレビ。全国ネットをもつ地上波放送の影響力が非常に強い日本は、ケーブルテレビが発達する海外先進国と状況がかなり異なる。また、携帯電話。昨今のメディアで「ガラパゴス化」と評されているように、日本の携帯電話は独自の機能進化を遂げている。このような日本のメディアの特殊性は、今後、全世界的に進行していく「コンテンツのデジタル化、オンライン化による放送と通信の連携」というムーブメントの中で、どのような可能性を持っているのか。サイバー・メディア株式会社 エグゼクティブ・ディレクター、マルコ・クーダーさんにお話をうかがってみました。

―テレビや携帯電話等、日本は特殊であるとよく評されるのですが、日本で8年間、メディアの仕事をされてきたマルコ・クーダーさんから観て、どう思われますか。

日本人の方は、よくそのようなことをおっしゃいますし、欧米人の方も、日本の話になると「あそこは特殊。島国だから仕方ない…」といった議論をする人がたくさんおります。でも、私は違うと思います。「便利であればどんどん使いたい」「楽しければどんどん体験してみたい」―ベーシックなところは、日本人も欧米人も同じです。事実、携帯電話もゲームも、流行っているのは日本だけではない。Wiiは、アメリカでもいつも品切れで、買い求める人たちの行列が絶えません。

―ただ、たとえば、日本で普及した“i-mode”のような携帯機能は、欧米では普及しませんでしたよね。この違いは、どこにあるのでしょうか。

“eco-system”の違いです。日本は、キャリアとコンテンツプロバイダーとユーザーの三者が、実にうまく連携し、co-workし、共存共栄の関係を築いていると思います。私が言う“eco-system”とは、この「連携」「共存共栄」のシステムのことを指して言っています。こういうシステムを作れるのは、世界のどの国をみても、日本の右に出る国はないでしょう。日本の携帯電話事情を「ガラパゴス化」と揶揄するジャーナリストがおり、携帯電話の機能における進化の特殊性や多機能が好きな日本人の嗜好をとり上げて「日本の特殊性」を指摘していますが、それは表層的な見方だと私は思っています。その機能を作り、育てていくための「環境」や「システム」が、日本と欧米では異なるのです。

―私たち日本人も、よく「アイランド・フォーム」といって、文化や民俗性の特殊性にすべて起因させてしまう傾向がありますが、それは少し偏った見方すぎるのでしょうか。

そうですね。何でもそこに持っていってしまうのは、早計でしょうね。一方で、私は「日本って、日本人ってなんて素晴らしいのだろう」と感嘆することも多々あります。先ほどの“eco-system”もそうですし、日本人は、アタマが柔らかく、クリエーティブな国民だと思います。たとえば、i-phoneのアプリで、私が見て、「これいい! オモシロイ!」と思うアプリは、たいてい著作者は日本人だったりします。日本人は、すぐれた技術やアイデアを持っている。そして、連携や協同がうまい。本当に素晴らしいと思います。ただ、ひとつ問題なのは、日本のプラットフォームやポータルは“close”過ぎるということ。たとえば、i-modeにしても、i-アプリに登録するには大変な面倒がかかりますよね。せっかくの技術、アイデアを持っていたとしても、それを世の中に出すまでに何枚もの固い扉を押し開けていかなければならない。もったいないなぁと思います。

―最後に、テレビについておうかがいさせてください。若者のテレビ離れといった指摘もある中で、日本は2011年に全放送がデジタル化されますが、今後、日本のテレビはどうなっていくと思われますか。

「パーソナル・メディア」にどう転換していけるか、にかかっていると思います。「90%がメインストリーム・チャネル」という日本のテレビ放送は、このままでは時代に合わなくなっていくでしょう。たとえば、アメリカを例にとれば、サーフィンのチャネルがあり、スケーターのチャネルがあり、ナツメロのチャネルがあり……テレビというのは個々人の嗜好に合わせて見る「パーソナル・メディア」です。インターネットの普及によって、確実に「パーソナル」「ロングテール」なメディアやコンテンツが求められている時代の中で、日本のテレビは、あまりに「マスメディアすぎ」ます。その意味で、2011年の放送のデジタル化は、大きな転機となるでしょう。テレビという端末がデジタル化、オンライン化することで、今までテレビ番組しか見られなかった箱が、web、VOD等さまざまなサービスを享受できる「マルチボックス」になっていくわけですから、そこで、ユーザーとテレビの関係に大きな変化が訪れるのは必至です。特に日本は、ハイスピードブロードバンド環境の整備においては、世界一のレベル。全国津々浦々にハイスピードブロードバンドが行き届いており、しかもこれほど安価に利用できる国は、どこにもありません。「世界のデジタルテレビ革命は、日本から始まる」と、私は確信しています。

―本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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