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Gプレスインタビュー

2010.February | vol.80

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「繋ぎのプランニング」が肝になる。

株式会社電通
ビジネス統括局 プラットフォーム・ビジネス開発室
テクノロジー開発部 プロジェクト・マネージャー

野田 大樹さん

1992年株式会社電通に入社。マーケティング局を経て、メディア・マーケターとしてメディア・プランニング、メディア・リサーチ、コンテンツ・コミュニケーションの領域に従事。2010年1月より現職。ARF/ESOMAR WAM(Worldwide Audience Measurement)国際会議における発表、メディア関連の媒体への寄稿、インタビューなど。

デジタルメディアの急速な変化、進展により、わずか数年の間で、広告ビジネス環境は激変してきた。それに伴い、広告会社に求められるソリューション力も多様化しており、従来のメディアプランニング、マーケティング、クリエーティブの相乗だけでは、クライアントニーズに応えることができなくなっているのが現状である。広告会社は、いま、新しいビジネススキームの構築に向け、様々な試みを行っている。株式会社電通の新組織「プラットフォーム・ビジネス開発室」も、その新たな試みを推進するセクションのひとつである。当室、テクノロジー開発部プロジェクト・マネージャーの野田大樹さんの話をリポートしました。

―講演にあたって

業務上、メディア・リサーチャー、メディア・プランナー、コンテンツ・マーケターといった様々な角度からメディア・コンテンツ・ビジネスのお手伝いをさせていただいておりますが、特にメディア・プランナーという立場において、広告媒体としてのメディアに関して実に様々な問い合わせをいただきます。表面的にみれば、そこで問いかけられる効果・効率、プランニング手法に関する質問は、ここ何年も変わっていないものも多く含まれます。ただ、同じように見える課題でも、その発生の構造が大きく変化しているという実感があります。

―「広告ビジネス環境」の大きな変化

ここ数年で広告ビジネス環境が大きく変わりました。中でも、ビジネスを支える「メディア環境の変化」は目を見張るものがあります。ただ、この「メディア環境の変化」というある意味使い古された言葉の捉え方が非常に重要で、全く別のものに単純にスパッと「化けてしまった」というよりも、従来あったものが「変質」しながら部分部分で融合し、複雑に絡み合っているような状態という方が感覚に合います。
あるメディアが強くなった・弱くなったといった単純な議論では、状況を的確に把握できないことが多いですし、広告会社の人間としては、広告の課題なのか?媒体の課題なのか?が、即答できにくい場面も増えています。つまり、あるメディアの広告媒体としての効果性が課題になっている場合(「○○ではモノが動かなくなった」といった類の議論)、その部分だけに注目していては、課題の本質が見えてこない上に、解決策を見出すことができないことが往々にして存在するということです。
付け加えますと、ナーバスな議論を伴いますが、コンテンツ(/メッセージ)とメディアの分離ということも直視せざるを得ない状態まで来ていると思います。接触率に代表されるメディアとしての価値に加えて、多少の割り切りを持ってコンテンツ(/メッセージ)そのものの価値を適正に評価する視点を早めに検討することが必要ではないかと考えます。また、その方が、それぞれのメディアの価値もより適切に把握できるという、多少逆説的な話も成り立ちます。

―大きな変化の「受け止め方」

それでは、そのようなメディア環境の大きなうねりを捉えるためには、どうすればいいのでしょうか?いくつかのポイントが考えられますが、その一つは、消費者個々人の視点から、情報の流れを構造的に把握するということにあると思います。
あたかも、自由で気まぐれな、ある意味わがままになった消費者が存在するといった議論を耳にすることもありますが、実態の捉えにくい消費者像を、なかば諦め気味に想定するのではなく、消費者がそのような動きをするのには、全体としての構造上の理由があるという視点をまず持った方が解決策に早く到達するというのが私見です。
例えば、広く消費者に広告メッセージを届けたとします。ここでは、消費者が反応するのに十分な刺激を受けている状況を想定してください。(この意味からも、メッセージの価値評価は重要です。)それに対する消費者のリアクションがとれないとすれば、そこに至る情報の流れに構造的な問題があることを、まずは考えるということです。(「多様な刺激の中に、乱反射する消費者がいる」といった受けとめ方を、少し離れてしてみることがポイントです。)

―繋ぎのプランニング

情報を発信する側として、消費者を刺激しっ放し、消費者からのリアクションを受信する側として、反応の待ちっ放しをしている状態では、情報の流れが構造的に分断されています。
そのように考えれば、両者の「間」の領域―「ミドル領域」で両者を「繋ぎ」、情報受発信を適切にプランニングすることが重要なポイントとなります。ただし、この「繋ぎのプランニング」は、まだ成熟していないのが現実。現在電通は独自の研究開発をはじめ、IPGとも共同で様々な取り組みを行っています。そのひとつが、まだまだ研究としての領域においてですが、テレビとネットの間の 「ミドル領域」を担うポストインプレッションの受け皿を、テレビ番組関連メタデータで補完していくための開発や検証です。メタデータを活用すれば、テレビの持つ力が明確に把握されるだけでなく、より大きな影響力を持って、情報の流れに構造的にドライブをかけることは想像に難くありません。このような「繋ぎのプランニング」こそが、これからのコミュニケーション・プランニングの肝になるかもしれませんね。

―単純なメディア論を超えて

少し議論を戻しますと、いわゆるマスとネットの関係性に関して、「M+I」とか「M×I」といった表現がとられることがありますが、ここまで述べてきたように、まさに両者は不可分な状況にあります。"M"と"I"を分離してその特性を把握しようとする単純なメディア論は、個々人の情報の流れといったものを考えると、不自然な感覚を覚えます。"I"にもマスな部分とそうでない部分が存在しますが、そのマスな部分の発信源は"M"であることがあります。まさに、部分部分で融合している状態です。振り返れば、マスメディアにもマスな部分とそうでない部分が存在し、「繋ぎのプランニング」さえしっかりしていれば、「マスでなければ価値を見いだせない」という安直な議論は成立しない場面に多々遭遇します。

さらに、現在の広告効果の測定トレンドから考えると、マスにはマスの価値、非マスには非マスの価値を見出すことができ、どちらかに偏りすぎると状況を見誤る危険性が高いということも付け加えさせていただければと思います。

(2010年1月19日 電通ホールでの講演より)

気になるテレビ語 groovy word on TV『私の名前はキム・サムスン』


今回のテレビ語は、【私の名前はキム・サムスン】。韓国で最終回に視聴率50%越えを記録したテレビドラマです。日本でもBS、今年1月にはフジテレビの韓流α(月~金 14:07~)で放映され、平均視聴率は5.2%に達しました。あらすじは、主人公のキム・サムスンがクリスマスイブに彼氏に浮気され、フラれ、勤務先もクビになり、そのショックから取り乱して、男子トイレ(!)に入ってしまう。そこで青年実業家の男性と運命的な出会いを果たし…という内容です。今回このドラマに注目したのは、実に多彩な検索ワードがあることです。ドラマタイトルでの検索数は1,505。つづいて【・】が抜けた「私の名前はキムサムスン」が1,454。そして「サムスン」(1,192)、「キムサムスン」(1,177)が続きます。他にも「わたしの名前はサムスンよ」「彼女の名前はキムサムスン」など、おそらくこのドラマだろうという少数派の検索ワードも…。一つの番組でこれほど多くの検索ワードがでてくるとは、やはり日本でも人気の高さを垣間見た気がします。


『Gガイドモバイル』ユーザ検索ログデータより 集計期間:2010/1/1-1/31

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