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Gプレスインタビュー

2011.February | vol.92

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テレビスクリーンを、格闘技のリングに喩えると。

株式会社電通
テレビ&エンタテインメント局
ビジネス推進部 兼 業務統括部

藤田 雄一郎 さん

フジタ ユウイチロウ
1996年 株式会社電通入社。テレビ局に配属。
放送局のタイム担当を経て、コカ・コーラ、マクドナルドや花王など、タイムセールスのクライアントを担当。並行して、アニメキャラクター"豆しば"開発やAdidas"ブルーカードプロジェクト"等の実施にも関わる。
2008年に、アメリカ西海岸のUCLAにてインターネットのテクノロジーを学ぶ。
2011年4月より、放送局のデジタル周りを担当するビジネス推進部に異動。現在に至る。

2011年、地上波テレビ放送のデジタル化、インターネットテレビの参入など、テレビにさまざまな変革の大波が押し寄せる。海の向こうではどんな波が起きており、それは日本にどんな影響を与えるのか。波をどう迎え、どう乗り越え、新たなチャンスを創出していくべきか。
新たな時代への不安と期待が交錯するなか、テレビ事情に精通した2人の電通社員のリポートをまとめました。
(2011年1月24日 電通ホールでの講演より)

―20年で、57倍。

何のことだと思いますか?正解は、テレビのチャンネル数。
平成元年、東京のテレビのチャンネルは7つしかありませんでした。それが今や、約400チャンネル。57倍に増えたのです。これは、大変な変化です。
「テレビスクリーン」をリングにたとえると、かつては7人だけで熾烈な戦いをしていたところに、今は400人あがって、戦うことになっているわけです。

―テレビ離れ、って本当?

データからみても、それは嘘です。
この10年間の消費者の生活行動の変化を見ると、遊びや仕事、勉強、睡眠の時間が減り、「メディア接触」の時間は増加しています(※グラフ1)。
2000年から2010年にかけて、一人当たりのメディア接触時間は30分、増えています。
また、テレビへの接触時間が、PCや携帯に接触する時間に大きく奪われているかというと、そうでもありません。自宅におけるメディア接触率は、相変わらず「テレビ」が圧倒的なシェアをキープしています(※グラフ2)。
つまり、決して「テレビ」そのものの地位が揺らいでいるわけではないのです。にも関わらず、テレビ放送、特に民放がここ数年危機感を抱いている理由、その本質とは一体何か。
それは、「テレビ離れ」に対する危機感ではなく「テレビスクリーン上のサバイバルの熾烈さ」に対する危機感といえます。

―民放地上波にとっての、ライバル

前頁の森氏のリポートにもあるように、VODやソーシャルメディアが強力なライバルとして登場してくる時代は、遠くないうちに訪れるでしょう。しかし既に、テレビスクリーン上ではサバイバル戦がはじまっています。民放にとっての強力なライバルを6人ほど、あげてみましょう。
1人目はNHK。ライバルとなる理由は大きくふたつ。一つは、リーマンショック以降、民放の番組制作費は激減したのに対して、NHKの制作費はほぼ横ばいであること。これが続くと、「番組の質」に開きが出てきかねません。もう一つは、日本の少子高齢化に伴い、テレビ視聴者の半数をM3とF3が占めるようになったということです。広告収入を前提としている民放は、購買力の高い若い世代をターゲットとした番組制作に偏りがちです。が、NHKはその偏りの必要がなく、テレビ業界の指標となる「世帯視聴率」をとりやすい構造がうまれています。
2人目は、世帯普及率が5割を超えたBSです。強いコンテンツをもつFOXやディズニーなど、2011年10月に11チャンネル、更に2012年3~4月には7チャンネルが新しく放送を開始します。
3、4、5人目はケーブルテレビ、IPTV、そしてTVゲーム機。このライバルたちとの戦いも、だいぶ前から始まっていますが、テレビデジタル化元年といわれる今年、その戦いはますます熾烈になること間違いありません。特にTVゲーム機は、ゲームとしてだけではなく、録画機能も備えているものも増えましたよね。
最後の6人目に、その録画機をあげておきます。HDDの大容量化もしかり、機能向上で録画もどんどん手軽になってきています。

―サバイバルを制するカギ

テレビスクリーンをめぐる戦いを制するには、民放地上波はどうすれば良いのでしょうか。
面白いデータが2つあります。
一つは、ドラッグストアでの買物傾向に関するデータ。「事前にある程度購入商品を決定」して、ドラッグストアを訪れる人は約50%。でも、ドラッグストアに着いてから、想定外の商品を購入してしまうこと、ありますよね。その理由の89%を占めるのが、「商品棚のPOP」なのです。
もう一つは、多チャンネル視聴者の番組選択行動に関するデータ。多チャンネルを見る人ほど、電子番組表を頻繁に見る傾向があります(※グラフ3)。
この2つのデータから導かれることは、「テレビスクリーン上のサバイバルを制するには、リングに上がるライバルの数が増えれば増えるほど、番組表がカギになる」ということです。電子番組表をいかに上手く利用できるかで、勝敗は大きく左右されるでしょう。

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