• シェイク!Vol.18 どうしたら作れる、面白い企画 4th(4)<br>伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)×米光一成(ライター)×佐藤ねじ(アートディレクター)

シェイク!Vol.18 どうしたら作れる、面白い企画 4th(4)
伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)×米光一成(ライター)×佐藤ねじ(アートディレクター)

今回は出て来たアイデアに対してどんなネーミングを付けるかが主要な話題。そこからテクノロジーを番組に応用出来ないか?という話だったり、面白くないゲームを作りたい。という話題も出てくる連載4回目。

惹きつけるタイトルのつけ方

伊藤

ねじくんが、メモをとるとき違和感を大事にするって言ってましたけど、ネーミングに違和感があると強いっていうのはありますよね。「夕日きれい」を「夕日エグい」って言い方にするとか。

米光

言い方ではっとさせられることってありますもんね。

伊藤

たとえば是枝裕和監督の『万引き家族』というタイトルの妙。家族という平和なイメージのものに万引きという、反対のイメージのものがくっつく。ぼくも昔「人妻温泉」という番組を作りました。人妻で温泉ってどんな卑猥なやつなのって興味を持ってもらえた。そういう言葉の拾い方って重要だと思います。米光さんの「はぁって言うゲーム」も、最初に聞いたときになにそれ? ってなりますよね。ネーミングはどうやってるんですか?

米光

そのまんまです。「はっけよい」って言うからはっけよいゲーム。「はぁ」って言うから「はぁって言うゲーム」。ゲームにゲームとつけていて、なんのひねりもない。そういうのが好きなんです。昔、コンピューターゲームを作っていたときもそうでした。制作期間が長いから、まず仮タイトルをつけるんですね。ベタでふつうのやつ、ぷよぷよしたキャラが出てくるから「ぷよぷよ」とか。最終的にはちゃんとしたタイトルを考えるつもりでいたんだけど、結局そのまま仮題が正式タイトルになることがほとんどでした。

伊藤

考えずにストレートなものをぶつけると。

米光

ストレートにつけたやつって、タイトルと中身が一致してるから、一体で覚えてもらえる。それって強いですよね。

佐藤

「大人の悩みに6歳児が答えるラジオ」もそうです。ネットコンテンツだからシェアしてもらいたいわけです。そのとき、タイトルでコンテンツの意味がわかるほうが気軽にシェアしてもらえる。わかりづらいタイトルだと、説明の言葉を書かなくちゃいけなくて、その分ハードルが上がりますから。

米光

伊藤さんの、池の水を抜く番組のタイトルなんでしたっけ?

伊藤

「池の水ぜんぶ抜く」。

米光

ストレート!

佐藤

さっきの「夕日エグい」の話ですけど、ぼくが「夕日きれい」を展開させるなら、生体データを集めて「きれい」の解像度を上げます。生体データから人の感動を数値化してグラフ化するとどうなるか。

伊藤

「きれい」って言ってるけど嘘だったりね。女の人が「きれ〜」って言ってる時、だいたい嘘なんだよ(笑)。

佐藤

テクノロジーが進むと、情報の解像度が上がるじゃないですか。いま喋っているときに、心拍数のデータがリアルタイムに表示されてたらどうなるんだろうとか考えちゃいますね。

米光

それ楽しそう。

伊藤

ぼくが「楽しいなーこのままずっと喋ってたいなー」と思っているのに、ねじくんはそろそろ終わりたいなと思ってたり。そういうのが分かっちゃうと恥ずかしいだろうなー。

佐藤

心のなかが分かったら恥ずかしいですよね。

伊藤

お笑いのネタ番組なんて恐怖ですよ。点数なんて押す必要ないですよね。もう生体データに出ちゃうから。

米光

それやってほしい! お笑い番組の審査に納得いかないことってあるじゃないですか。「違うよ、そこはマツモトクラブさんだろー」みたいな。

伊藤

脳みそ夫を見てて、ぞわーっとするときありますね。あの感覚がデータになったら面白いでしょうね。

米光

あと、審査に納得が行かなかったときに、テレビで見るのと生で見るのとでは評価が変わってくるのかなーって気になるんですよ。そこの確証が欲しいから、全員に生体情報モニターつけてほしい。

佐藤

データで「この人は面白がっている」とはっきりとはわからなくても、「なんか司会者が尋常じゃない反応してるぞ」と分かったら、そこから人は想像する。その曖昧なところも面白い。

米光

生体データがリアルタイムに見られるなら、やる側も変わりますよね。お客さんの笑い声があると芸人さんがどんどん乗ったりするみたいに。

佐藤

LINEとかSNSでの言葉のやりとりって、気分を絵文字やスタンプで伝えるじゃないですか。リアルタイムに人の心拍数が分かったらよりわかりやすいですよね。自分のこどもの心拍数がいまめっちゃ上がってるけどなにかあったのかなーとか、想像すると楽しそう。

米光

それ心配にならない? 歴史の授業中なのに心拍数めちゃめちゃ上がってるよーとか。

伊藤

昔、ツイスターっていうゲームあったじゃないですか。あれは確実にへんな気分になるゲームですよね。

米光

そうですね。それを狙ってるんだと思います。

伊藤

へんな気分になるゲーム作ってください。

米光

へんなゲームねー。

伊藤

すげー眠くなるとか。眠れない人がやるゲーム。

米光

いいですね。面白くないアナログゲームが作りたいんですよ。切なくなったり悲しくなったりするような。他のエンターテイメントには、めちゃめちゃ悲しい作品だってあるのに、アナログゲームはわりと面白い一辺倒なんだよな。コンピューターゲームだとストーリーがあるから、切ないものもあるんですけど。

佐藤

ぼくも面白くないゲームを作ってます。

米光

うむ。ライバルだ。

佐藤

「交感神経衰弱」っていう。交感神経を衰弱させ、その分、副交感神経の働きを活発にして、リラックスした状態にするゲームなんです。ちゃらーんとか気持ちのいい音が鳴る。

米光

神経衰弱みたいに、同じ音を探すってこと?

佐藤

Suicaのような読み取り機能のついたカードを、ボードゲームのカードとして使うんです。

米光

こないだ香道を体験したんですよ。白い靴下持参で、履き替えて畳の間に座って、香木をたいて、香りを聞き分けるの。それもゲームの一種といえば一種だけど、面白いというよりは、澄んだ気持ちになるような不思議な体験だった。厳かな儀式っぽく遊びをやると、また違う感じになるよね。

[ 次回 世界を変える方法、あるいは変えずに続ける方法 へ続く ]

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