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Gプレスインタビュー

2012.October | vol.113

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失敗してもいい。怒られてもいい。
恥ずかしいことを大きな声で言おう。

テレビ東京
制作局プロデューサー

伊藤 隆行 さん

いとう・たかゆき
テレビ東京制作局プロデューサー
1972年10月24日生まれ。早稲田大学政治経済学部をギリギリで卒業後、報道志望でテレビ東京に入社。その後、1秒も報道に携わることなくバラエティ制作の世界へ。「やりすぎコージー」「モヤモヤさまぁ~ず2」「怒りオヤジ3」「そうだ旅(どっか)に行こう。」等を立ち上げる。

よみうりテレビ西田二郎さんを皮切りに、今のテレビ番組制作を支えている各局の方たちにリレー式でインタビューをしていく、Gプレス2012サマーセッション。第4号目は、『モヤモヤさまぁ~ず2』『そうだ旅(どっか)に行こう』『イラッとくる韓国語講座』等、伊藤ワールドともいうべき独特のエッジがきいた番組を次々と生み出しつづけている、テレビ東京プロデューサー伊藤隆行さん。「テレ東らしさ」にこだわる彼に、番組制作の極意についてきいてみました。

―伊藤さんのいう「テレ東らしさ」とは、どんなことですか。

 これは、テレ東のディレクターだった田原総一朗さんの言葉ですが、「ふつうにやったら(視聴率)とれないんだから、何やったっていいんだよ」と。この思考が、テレ東の伝統になっているといえます。幸いなことに、視聴者からも「テレ東だから、まぁいいか」「テレ東だからOKだよね」という温かい愛情をいただいているわけでして、このテレ東ならではの伝統と愛情を守っていかなければならないと思っています。

―その「らしさ」を守っていくために、伊藤さんが心がけていることは何ですか?

 番組作りって、自分がやりたいことを世の中にさらけ出しカタチにすることだと思います。その「自分がやりたいこと」に対する原点にあるのは、ある人や物事への個人的な執着だったり、愛情だったり、恨みや憎しみだったりするわけでして、そういうものをさらけ出すことって、最も「恥ずかしいこと」じゃないですか。その「恥ずかしいこと」を、大声で言うこと-それが、番組づくりの原点です。世の中に言う前に、企画を通すために、まずは社内で大声出して言わなければなりません。自分はそれをためらいなくやってきましたが、今の若い世代を見ていると、恥ずかしいことを大声で言わなくなったなぁとは思いますね。

―若い人たちに対して、伊藤さんが意識的に何かされていることはありますか。

 あえて後輩の前で、失敗したり、怒られたりする姿を見せるというのはありますね。絶対通りそうもない無茶な企画をあえて出そうと「今から俺爆死するから、そのときフォローよろしくな」と後輩に頼んだりします(笑)。ま、こういう先輩もいてもいいかなというのと、今の若い世代は、失敗したり怒られたりすることにためらう傾向があるので、それを拭ってあげるのも先輩の役目かな、と。せっかく「何やったっていい」局に入社したのですから、思い切り怒られたりするような企画をバンバン出せばいいんです。

―とはいえ、逆に「何やってもいい」番組づくりというのは、難しくないですか。

 そうですね。テレ東は、直球を投げられない放送局ですから、常に変化球とか暴投とかそういう球で勝負していかなくてはならない難しさはあります。奇を衒いつつ、それが「企画」になっていなければいけない。言い換えれば、計算された「ゆるさ」や「外し」を作っていかなければならない。直球勝負でいける大手キー局にはない産みの苦しみはあると思います。

―しかし、伊藤さんの番組を見ていると、そんな苦しみをみじんも感じさせない、のびのびと楽しく作っている感じが出ていますよね。

 それは、僕自身が「テレ東」的な人間だからかもしれません(笑)。

―どういうことですか?

 私的な話で恐縮ですが、僕は高校大学とずっと野球をやっていたんですが、バントばかりやらされていたんですよ。バッティング練習はずっとバント。マシンに向かってゴチンゴチンと千球ぐらいね。あれはもう、悲しみの極みです(笑)。コーチから「バットの芯を持て」って言われるんです。芯は、本来「球を当てる」所であって、「持つ」所ではないですよね。しかも、「弱い打球を打て」と。普通は「強い打球を打て」じゃないですか。くそーっ!俺もいつかは思い切り引っ張ってホームラン打ちてぇー!って思ってましたね。
 自分がバントしかやらせてもらえなかったのは、前を打つ5番にエースで強打者の奴がいたからなんです。そいつがまたよりによってTBSに入社しまして。「彼5番、俺8番」の次は、「彼TBS、俺テレ東」なわけです。僕の番組作りの原点には、彼に対する憎しみと復讐があります(笑)。TBSでは絶対作れないような番組で、いつかホームラン打ってやるって思ってます。

―まさに、先ほどおっしゃっていた「番組づくりは、恥ずかしいことを大声で言うことから始まる」ということですね。

 僕がテレ東に入社したときに、上司から言われた言葉を今も覚えています。人は誰でも「99%の凡才と1%の天才」から構成されていて、その「1%の天才」をどう発掘し表に出していけるかにかかっている、と。結局、僕らの業界で「才能」とよばれるものは、誰かから与えられるものではなく自分の中に潜んでいるものであり、だから、自分の中にあるもので勝負していくしかないんです。どんな仕事でもそうだと思いますが、入社してある程度仕事を任されるようになると、数字に追われたり、あの先輩みたいにならなくてはいけないんじゃないかと思ったり、右往左往する時期があると思います。でも結局、最後は自分の中にある何かを信じ、起爆力にするしかありません。僕の場合、あのバント練習のときの思いが起爆力の一つになっているということです(笑)。

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