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2006.July | vol.39

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テレビという生活ツールは、デジタル化によって、
何が変わり、何が変わらないのか。

株式会社ビデオリサーチ
テレビ事業局 メディア企画推進部長

尾関 光司さん

日本にテレビが誕生して、およそ50年。モノクロからカラーへ、衛星放送の登場、そして、デジタル化。さまざまな進化を経て、私たちの生活に深く広く浸透してきたテレビ。その一方で、PCやモバイル端末をはじめ、生活者が接触するメディアは多様化し、テレビそのものも「マルチメディア化」という新たな局面を迎えている。視聴率という指標を生み出し、生活者視点でテレビの価値を見続けてきた株式会社ビデオリサーチの尾関さんに、テレビの今後についての大局感をうかがってみた。

―「テレビのデジタル化、メディアの多様化によってい、テレビの価値が大きく変わるのではないか」という人たちがいますが、尾関さんはどう思いますか。

私は、まったくそうは思っていません!(笑)そもそも、人はテレビを視聴する為に生きているわけではありません。私は、個人的に、<視聴者>という言葉遣いは間違っていて、<生活者>というのが正しい言葉遣いだと思っているのですが、その<生活者>にとって関心があるのは、「お金と時間の上手な使い方」ということに尽きます。その中で、テレビは、「面白いものをタダで見せてくれる」とてもありがたいツール。だから、これほどまでにお茶の間に浸透してきました。生活者に直接声を聞くと、人によっては、テレビを「時計がわり」という人もいれば「絵の映る家電」くらいに観ている人もいるわけで、そのことは、デジタル化されようが、メディアが多様化しようが、変わらないでしょう。そもそも、デジタル化について、生活者視点で言えば、「興味を持っている」というレベルの人が世の中の半分程度、そのうち、それを積極的に自分の生活の中に取り入れようとしている人は数十%という感じでしょう。業界の人間は、デジタル化!デジタル化!とわりと大騒ぎしますが、生活者にとってみれば、「便利なら使う」「かっこよさそうなら使う」…そんな程度の認識です。

―では、2011年に地上波のうちアナログが停波し、総デジタル化しますが、テレビの視聴スタイルには大きな変化はないということですか?

たとえば、デジタル化に伴い予測されるひとつの変化として、「タイムシフト視聴」ということがよく言われます。確かに、そういう変化はある程度起きていくでしょうが、結果として、2011年には全てのテレビ視聴がタイムシフトに移行しているようなドラスティックな変化は起こりえないでしょう。それ以外にも「多チャンネル化」「高画質」「双方向」といった変化が想定されてきましたが、どれも、テレビという文化そのものをドラスティックに変えるほどのものではないと思っています。そもそも、それらの変化はアナログ時代にもすでに始まっています。たとえば、衛星放送が開始されてからすでに約17年の月日が経ちますが、放送開始以前と以後で、世の中のテレビ視聴スタイルがガラリと変わったでしょうか?答えは否です。高画質、双方向に関しても、同様です。ただ、 2011年には、こうした放送のデジタル化だけではなく、もっと大きな変化が「まとめて」やってくるかもしれないという点では、今までとは多少インパクトが違うかもしれません。

―世の中に「変化」というインパクトをもたらすものともたらさないものと、何がどう違うのでしょうか?尾関さんの考えをお聞かせください。

物事が世の中に浸透していくプロセスには、3段階あると思っています。①普及→②利用→③変化。たとえば、およそ四半世紀前に、ウォークマンというものが登場しました。当時、似たような商品は他にもありましたが、ウォークマンが初めて「普及」に成功しました。それをみんなが使いこなすようになり、音楽を携帯できるようになった。これが「利用」。そして、そのことによって、それまでは限られた人たちが限られた空間で楽しむものであった<音楽>が、誰もがいつでもどこでも気軽に楽しめるようになった。これが「変化」です。次にMDというものが登場しました。これはアナログからデジタルへの切り替わりと言えますが、「①普及」し、「②利用」されたとしても、本質的な「③変化」にまで達したものとは言えないのではないでしょうか?しかし、それが、ipodにまで行くと、ある種のメディアにまでなってしまっており、大きなインパクトを与えていると言えるのかもしれません。こうした観点で言えば、2011年のデジタル化は、テレビに関して、「③変化」までは起こしえないだろうと考えています。

―今まで、テレビに「変化」をもたらしたものは何でしょう?また今後「変化」をもたらす可能性をもっているものは何でしょう?

生活者から見たテレビには今までに大きな変化が2つありました。ひとつは「カラー化」であり、もうひとつは「リモコン」の登場です。この2つの出来事は、視聴スタイル、番組の内容や編成に至るまで、テレビというものに大きな「変化」を与えたことは、説明するまでもないでしょう。この2つがなぜ「変化」のドライバーになりえたかといえば、答はシンプルで、生活者にとって「間違いなくいいこと」だったからです。生活者からすれば、モノクロよりカラーがいいに決まっているし、リモコンでサクサク操作できた方がいいに決まっています。そして、そのぶん接触機会が増えるわけですから、メディアにとっても、ある意味、いいことです。「変化とは、技術革新によってもたらされる」という人がときどきいますが、私は違うと思います。どんなに高度な技術革新であっても、それが送り手や受け手にとって「いいこと」でなければ、「変化」を起こすことはできません。テレビに関して、今後「変化」を起こす可能性を持っているものとは何か、を考えるときも、そういう視点で考えるべきでしょう。だから、<多チャンネル>や<高画質>が「変化」をもたらすとは思えないのです。リップサービスするつもりはありませんが(笑)、たとえば、御社の提供する<Gガイド>は、<カラー化>や<リモコン>に匹敵する<変化のドライバー>になる可能性を充分に秘めていると思います。それによって、テレビが「もっと見やすく」「もっと楽しく」なれば、それは、生活者にとってもメディアにとっても「間違いなくいいこと」なわけですから。(笑)

―本日は、斬新なお話をありがとうございました。大変刺激になりました。

暴言も多かったと思いますが、こんなお話でよかったのでしょうか(笑)。今後とも、宜しくお願いします。

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