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2007.December | vol.56

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ローカルテレビ局にとって 放送のデジタル化は、いかなるチャンスか。

名古屋テレビ放送株式会社
事業室 デジタル事業部長

福嶋 更一郎 さん

2011年地上波全放送デジタル化に向けて、各放送局では、さまざまな変化が起きはじめている。放送のデジタル化は、コンテンツのあり方を変えていくだけでなく、そのための設備投資をどう回収していくのか等、各局の今後の事業ビジョンが問われる問題でもある。「ローカル局はいったいどうなっていくのだろう?」という論議が喧喧がくがくと繰り広げられているなか、いったい、デジタル化はローカルテレビ局にとってチャンスなのか、ピンチなのか。ネットショップ『メ~コレ』の立ち上げを始め、様々な新ビジネスにトライしている、『メ~テレ』こと名古屋テレビの福嶋更一郎 デジタル事業部長に、お話をうかがってみました。

―福嶋様は、デジタル化はローカルテレビ局にとって <チャンス>であるというお考えをお持ちですが、なぜ そのように思われるのですか?

いままで放送メディアに閉じ込められていたものが「外に出 られる」わけですから、これは「チャンス」と捉えるべきでしょう。私たちの持っている情報やコンテンツが、いろいろ なメディアに出ていけるようになった―問題は、その「出ていき方」さえ気をつければよいのだと思います。

―「気をつける」というのは、ソフト周りの権利関係とい うことでしょうか?

もちろん、それもそのひとつでしょうね。ただ、それだけで はありません。ハード、ソフト、システム…すべてにおいて、デジタル化という新しい波に対応して開発していく必要があ ると思います。たとえば、「権利」の問題においても、そのコンテンツを放送後どのようにクロスメディア展開していく かを想定して処理していかなければなりません。結局、いまの番組の作り方自体が「作ってから許可をとる」という後追 い的なシステムになっているところにも問題があるわけです。そういうところも含めてどう変えていくかを考えなければ、 せっかく外に出られるチャンスをもらっていながらそのチャンスを逃してしまうことになります。

―つまり、デジタル化をチャンスにするか否かは、各テ レビ局がそれをチャンスにすべき新しいアクションを起こ すか否かにかかっている、ということですね。

もちろんです。どんな業界だってそうでしょう。時代は大き く変わっていくのに、自分たちだけは変わらなくてもいいなんて言っていられるはずがありません。特に、私たちテレビ 局というのは、世の中と一緒に動いていくものですから。ひとつ大事なことは、変えるものと変えてはいけないものの見 きわめでしょうね。自分たちが持っている「変わらない強み」って何だろうと考える。そして、その強みを維持しさらに強 力にしていくために、新しいことや変化に対してはどんどん積極的にやっていく。たとえば、ローカル局の場合、エリア に密着した取材、番組制作を通じて膨大なデータ蓄積があるわけです。しかも正確性・信頼性の極めて高いデータを大量 に持っていることが「変わらない強み」のはずです。それらを今までは放送波というメディアを通じてしか出していけな かったのが、これからはそうでなくなる。新しいメディアやツールを開発すれば、「強み」を活かしビジネスの拡大につ なげていけるはずです。

―そのひとつの試みが、ネットショップ『メ~コレ』ですね。

『メ~コレ』を立ち上げた意図は、放送を通じて毎日情報を 発信しているのに、視聴者との接点を用意していませんでした。たとえば、紹介された商品を視聴者が購入したくてもす ぐには買えません。今まで、実 に不親切だったと思います。取材する側、される側、そして見 る側、そのコミュニケーション の場としてネットショップ『メ ~コレ』を立ち上げました。まだ、番組との連動は不十分ですが、 今後はデータ放送、モバイルサ イトにもウインドウを広げ、い つでもどこでも手軽に『メ~テレ』とコミュニケーションしてもら えるように構築していきます。 ローカル局にとって、日々の積 み重ねがビジネスに結びつき、「ちょうどいいサイズ」で展開出来 る時代が来たと感じています。

―なるほど、おもしろい話ですね。まさに、ローカル局 ならではの「放送と通信の連携」事例ですよね。そのよ うなビジネスは、アイデアを絞ればたくさん生まれそうで すね。

そうだと思います。「テレビ= マスメディア」という図式が 強いですから、そこで展開されるビジネスについても、どうしても規模の論理で考えてしまいがちです。キー局が上でロ ーカル局は下、みたいな。でも、デジタル化は、そういう従来の図式を変える出来事だと私は思っています。キー局でし かできないこと、ローカル局でしかできないこと、それぞれがあって、それぞれが今まで出られなかった外界に出ること ができるようになる―平たく言うとそういうことではないでしょうか。だから、いずれにせよ「チャンスである」と私は 思います。

―本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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