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2008.March | vol.59

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クロスメディアの時代になり、広告の何が変わったのか。

株式会社 宣伝会議
編集室長

田中 里沙さん

インターネット、携帯電話をはじめ情報チャネルが多様化し、従来「圧倒的なパワーをもっていた」とされる「マスメディア」の広告的な意義や位置づけが変化してきた昨今、広告界のビジネスは、大きな転換期を迎えている。広告会社は、「クロスメディア」「メディアニュートラル」といった新しいコミュニケーションメソッドの提案をクライアントから強く求められている。ただ、こうした変化の時こそ、広告の価値とは何か、マスメディアの価値とは何かといった、「本質」を再考すべき時ともいえる。およそ半世紀にわたり、広告会社視点とクライアント視点の両視点から、あるいはハードとソフトの両面から、「広告」を多面的に見つづけてきた宣伝会議。その編集室長である、田中里沙さんにお話をうかがってみました。

―現在、広告界では、「クロスメディア」ということが盛 んに言われています。かつても「メディアミックス」と いった言葉が流行った時もありましたが、あの頃と今とでは、いったい何が違うのでしょうか?

インターネットや携帯電話の普及により、「情報源」の「幅」 が飛躍的に広くなったことが大きな変化ですよね。そのことによってメディア側に起きた大きな変化として、「メディ アの格付けがなくなりつつある」ことが挙げられると思います。かつての生活者は、まずテレビや新聞や雑誌等で「確 かな情報」を得て、それから店頭に足を運んで自らの手で確かめました。そういう時代は、いわゆる<マスメディア>が 圧倒的な地位を持っていたわけです。しかし、今は違います。「確かな情報」は、テレビや新聞に限らず様々な情報源から 入りますし、店頭に自分で足を運ばなくても「代わりに足を運んだ人の情報の束」が容易に手に入る時代。そうなると、メディアの使い方、価値基準が変わるのは当然なわけでして、「クロスメディア」という考え方が生まれたのは、必然ですよね。

―その中で、「まず企画ありきでプランニングしよう」 という「メディアニュートラル」といった考え方も台頭してきたわけですよね。

その通りです。「メディアニュートラル」自体は、かなり以前 から言われていたことですが、以前はわりと机上の空論っぽかった。それが、クロスメディアの時代になり、現実的な ものになったわけです。メディア側の視点も、たとえば、テレビや新聞は今までは<権威>というものに頼りすぎてい た感がありましたが、「メディアニュートラル」という考え方によって、「そのメディアでしかできないことは何か」という本質的な価値に立ち返って考えるようになってきまし た。

―ということは、広告ビジネスは、これからも良くなっていくと考えてよいのでしょうか。

捉え方の問題ですから、ひとえに何が良くて何が悪いかは 言えません。広告界で、「最近の広告はつまらなくなった」と自らに厳しくいう方がときどきいらっしゃいますが、私は 全然そうは思いません。今は様々なソースから情報を得ることが出来ますから、生活者の広告に対するリテラシーは 昔に比べてかなり高くなっています。広告のビジュアルやコピーを読み解く目、感じる感性は研ぎ澄まされてきているわけで、そういう生活者を対象にするという意味では、広告はますます面白いものになっていくはずです。

―しかし、広告会社の方たちに話をききますと、「クラ イアントニーズがどんどん高度化、複雑化して大変に なった」という声をよく耳にしますが。

確かにそうでしょうね。企業宣伝部の方たちとお付き合い して感じることなのですが、以前は、宣伝部のミッションは、企業や商品の「知名度」「好感度」を上げることでよしとされ ていたのが、ここ最近は「売り上げ」「ROI」まで向上させることを大きく期待されるようになりました。言い換えれば、 広告に課せられるものがズシリと重くなり、そのことによって宣伝部に対する会社からの風当たりやプレッシャーも 強くなっています。その影響が広告ビジネスに与えるインパクトは小さくないはずです。

―それで「最近の広告はつまらなくなった」と言う人がいるのでしょうね。

申し上げましたように、決して「つまらなくなった」わけで はないはずです。ただひとつ言えるのは、アクチュアル(数値で測れる成果)が求められるあまり、「小さな失敗が許さ れない気風」が蔓延してしまうとすれば、それは望ましくないことですよね。新しいことにチャレンジする機運がそがれてしまうことになりますから。

―そうならないためには、どうすればよいと田中さんはお考えですか。

宣伝部の方たちの各社内でのポジションが、もっと高く、そ して存在感も大きくなっていいのではないでしょうか。広告コミュニケーションへの期待はますます大きくなり、経 営の根幹を支える要素になってきています。であれば、その広告を司る宣伝部は、<社内HUB>としての重責を担うべ きであり、それ相応の予算が割かれるべきです。一部の先進 的な会社はすでにそのようになっていますが、ミッショ ンは大きくなってもポジシ ョンは以前のままといった 企業もまだ多く見られます。 そこは、少しずつでも変わっていくべきではないかと、希 望も込めて思っています。宣 伝担当の方は、自分の会社、 そして商品にたいへんな愛情をもち、コミュニケーションに情熱をお持ちです。

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